誰にも分け隔てなく注がれる善意と巧妙な処世術とを区別するのは難しい

模倣は常に失敗に終わる 本物なら人を魅惑したあらゆるものが 模倣された途端 誰にも喜ばれなくなる

嘗て危険に身を曝した事が一度もない者には 自分の勇気を請け合うことはできない

葬儀が華美になりがちなのは 死者に礼を尽くす為というよりも 生者の虚栄心を満足させるためである

謙遜は褒められることを嫌っているように見えるが 実はもっと巧く褒めてもらいたいと思っているのだ

親友が逆境に陥った時 我々は何時も何となく浮き浮きした気分になる

友人達の幸福を知った時に 誰もが最初に示す反応は喜びであるが 然し其んな喜びは 我々生来の善意から生まれたものでもなければ 我々がが彼らに対して抱いている友情から生まれたものでもない 其れは次は我々自身が幸福になれるだろうとか 彼らの幸福のおこ…

不幸な人は屡々 自分が不幸に見える事に或る種の喜びを覚えて 自分を慰める

人は自分が思っている程不幸である事は決してないし 自分が期待した程幸福である事も決してない

誰もが他人に見付けられた時分の欠点を 他人に見付けようとする

我々が怠惰なのは 肉体に於いてよりも 寧ろ精神に於いてである

女達は初恋では恋人を愛するが 次からは恋其のものを愛する

重大事に於いては チャンスを新たに作り出すよりも 今目の前にあるチャンスを生かす事に専念す可きである

我々は友人達の欠点を 自分に差し障りのない限りは 簡単に赦して仕舞う

恋の病では何時でも 先に直った方が勝ちと云う事に為る

有ら得る欠点の中で 我々が自分にあっても良いとあっさり認めて仕舞うのは 怠惰である 誰もが怠惰は総ての穏やかな美徳に結び付き 其の他の美徳も完全に破壊する事なく 其の機能を一時停止する丈だと思い込んでいるのだ

女が最初の恋人を長い事放さずにいるのは 次の恋人が如何にも捕まらないからである

愛する人に騙された儘でいる方が 騙された事に気付くよりも 不幸ではない事もある

人は自分の趣味を諦める位なら 自分の利益を諦める

男が恋人を愛しているのは 彼女自身の為だと信じているとすれば 其れは大きな間違いである

うんざりする事が赦されない人と一緒にいると 大抵うんざりする

普通我々が自分の心の底を友人達に明かそうとしないのは 友人達を信用しないからと云うよりも 自分自身が信用出来ないからである

自分に起こった事を ほんの細かい点に至る迄よく覚えていると云うのに 其の話を同じ一人の人に何度繰り返したか さっぱり覚えていないとは 一体如何した事だろうか

病気に治療を施す場合も其うだが 事業に改善策を施した場合 逆に暫くの間 事態が悪化して仕舞う事がある 其うした事態に対処する秘訣とは 治療や改善策を施すのが危険になる時期を 正しく察する事である

同じ一つの事柄を処理するのに 幾つもの方策を思い付くと云うのは 精神の豊かさと云うよりも 知性の光の欠乏の所為であり 頭に浮かぶ有ら得る考えに注意力が分散して仕舞い 最良の方策を直ちに見分ける事が出来ないのである

能く調べもせずに 悪を容易く信じるのは 傲慢と怠惰の所為である 人は大抵 罪人探しには熱心だが 罪 其のものを詳しく調べようとはしない

通常 人が若者に授ける教育とは 彼等に二番煎じの自己愛を吹き込む事に外ならない

敬意とは敬意を返してて欲しいと云う欲望 更には自分の礼儀正しさを評価して欲しいと云う 欲望に外ならない

欠点が能く似合う人もいれば 調書の所為で疎んじられる人もいる

本当の雄弁は 必要な事は総べて謂うが 必要な事しか謂わない