模倣犯。

誰かを真似るのではなく
誰でもない自分に成りたいと強く願った。
でも、自分に成る恐ろしさに負けて
僕は今日も誰かを模倣するんだ
誰かの服装を
誰かの価値観を
誰かの既成概念を
誰かの思想を
誰かの尊敬を
誰かの幸福を
誰かの愛を
そう。
誰かの・・・。
誰でもない自分になんて成れないと思った。
誰でもない自分なんて存在しないと思った。
誰かに依存し誰かを模倣するのは
容易い事で然程恐怖心なく街を彷徨える
話が出来る
議論が出来る
でも、誰かと議論をしている時
誰かと話をしている時
何処かの街を彷徨っている時
其れが途轍もなく無意味で空しい物に感じた。
だからといって僕には如何する術も持ち合わせては居ないし
そんな決断力も勇ましい気力も不幸にして備わっていなかった。
屹度、貴方もそうなのでしょう?
其れは仕方がないです。
貴方の思考が思想が価値観が
誰かに汚染された故に生まれた物だとするのなら
其れは俗世の汚物なのです。
俗世だなんて言葉を使えば恰も宗教勧誘の様。
然し、誰かに汚染されて出来上がった貴方と言う人格は
誰かを模倣する事でしか価値観を示す事が出来ないのだ。
詰まり、人生のむなしさのひとつは其処に存在する。