コンコース。

誰とも話したくない。
考えたくなかった。
只、電車に乗り込む人
ホームを歩いている人
眠っている人
本を読んでいる人
そんな、自分の人生には
関係ない人々を見ている丈で良かった。
関係ないものを沢山見て、薄めたかった。
忘れたかったのだ。
其れがどんなに難しい事でも・・・・・・。
知らない人々。
皆が勝手に生きている社会。
関係ないのに、大勢が存在している丈で安心出来る。
屹度、買ったばかりのスケッチブックの様に
真っ白な頁ばかりが続いている
何となく気の休まる風景。

仕事をして
疲れて
其れでも何かを求めて
誰かを愛して
毎日
電車に乗り
階段を上り
汗を掻いて
要求して
妥協して
喜んだり
怒ったり
其れでも、忘れて仕舞う・・・・・・。
そう、最後には、全部忘れて仕舞うのだ。
何も残らない。
結局、スケッチブックは
真っ白の儘で終わって仕舞うのに違いない。
雑踏の無秩序な人の流れの中で一瞬立ち止まった丈。
そんな些細な抵抗だったのではないか。
ずっと遠くへ自分は来ている。
今迄経験した事の無い、距離だった。
何処から私達は来たのだろう。
此れから、何処へ行くのだろう。
私は誰だろう。
偶に、こうして考える。
其れ丈の為に生きているのだろうか。
電車を降りて、東京駅のコンコースは人で溢れ
丸で、銅線を流れる電子の様だ。
マイナスからプラスへ平衡を求めて
詰まり、大いなる死を目指して
人々は絶え間無く流れている。
考えない様にする事は難しい。
何かを見ようとしても直ぐ見えなくなる。
音を聞こうとしても、聞こえなくなる。
感情をコントロールする為の理屈を構築し
泣かない為のバランサを配置し
新しいバリアを必死に張り巡らしている自分・・・・・・。
ニューラルネット
確固たる防護システムを一生掛かって組み上げる。
自分は何を学んだのか。
多分、死ぬ時迄に、死を恐れないシステムを作り上げる。
然し、死を学習する為に生まれて来たというのか。