二人を辛うじて繋いでいるモノはフォトンであり亦其の逆も然り。

大学に続く坂道を登っている途中に
トルコ行進曲が聞こえて来た
とても稚拙なメロディーを刻む
でも、其の鍵盤を叩く音は何処か力強くもあった。
自分の不甲斐無さに苛立ちを込めているかの様だった。
荷物を積んだトラックが下っていく
乗合自動車が僕を追い越した。
金木犀の香りと
葉緑素の落ちた
生産性のない有機物が僕の足を絡める
季節外れに虫が生を謳歌している
相手等もう居ないだろう?
此の世には存在しないさ。
霧吹きの様な雫が僕の肩に掛かって
空を仰いだ
天と地程の差がある其の空間には
天と地程の差があるんだよ。
本当に遠いなぁ。
鼻を啜りながら
和尚さんの鼻を憂う。
存在して滑稽
然し、其れを失う事の滑稽さに比べれば如何って事は無い。
何時だって人は喪失して意味を知るんだ。
其して過去を美的に飾り立てる。
喪失の憂いにして
喪失の美学
其れは失った時に意味を発し
失わなければ何の意味も持たない唯の画落他。
彼の腕前なら夜想曲は多分弾かれない。
今夜は晴れるだろうか。
何処かで烏が鳴いている。
山茶花が咲き乱れる小道に足を踏み入れて見たいと想った。
僕には経験がなかった。