自由ホールと自由電子の狭間で電圧は不安定な安定を示す。

其の男は芥を大切に拾う。
其れはリサイクルの余地も存在しない芥だが
其の男には其の作業こそが其の男の命を繋ぎ止める
唯一の行動で唯一の仮想的理由意義である。
けれども、其れは何かに昇華する事も無く
只の芥として
其処に存在し続ける。
芥を拾い続けた年月に比例し
其の男は辛うじて生を繋ぎ止める事が出来たが
其の年月に反比例し
男は人間社会からの脱却を余儀なくされていた
完全に歯車が噛み合わなくなった時
漸く男は其処に存在する事が出来ない事を知った。
安定した無知の鳥篭に守られた軟弱な精神は
其の破壊を余儀無くされ
自分には何も無い事を知らされた。