赤い鍵。

赤い鍵の所有者である君は
悲しげに嗤うのが得意だった。
窓際の椅子に腰かけて
空を見上げる。
僕は今迄の人生の中で
此んなにも窓際と秋が似合う人は見た事がなかった。
僕が、そんな発言をすると
「あら、貴方だって私が生きてきた時の中でこんなにも怠惰に生きた人はいなかったわ」
と、訳の解らない比較を持ち出す。
シャンパングラスの疵の様な君の発言は
僕を幸せにして
僕に思考を与えて呉れる。
どれだけ理由のない言い訳をしあうのか。
僕らは其れを最上級の遊びの様に認識していた。
君は、其処に上書きをする。
上塗りをして上塗りをして。
どんどんどんどん黒に近づいていく。
どんどんどんどん遠くに行っていく。
インフレーション的に遠く
反比例の様に近く