アネクドートと逸話。

昔 此んな話を聞いた
街に遣って来た男の話だ
其の男は街角に立ち説法を始めたのさ
「世の中が良く成る様に」
其う言って男は説法をし続けた
毎日 毎日だ
最初は皆、男の言う事に耳を傾けた
共に戦おう と言う者もいた
だが 皆は再興味を喪っていった
連中にとっちゃ世の中が如何成ろうと知ったこっちゃ無かったんだ
だが 男は已めなかった
年を食い誰一人聞く者が居なくとも男は説法を続けた
或る時 其処を通り掛った子供が男に聞いた
「如何して誰も聴いていないのに」
「説法を続けるのか」と
其の男は此う答えた
「最初は皆を変えられると思っていた」
「其うして今は叶わぬ夢だとも知っている」
「だが俺が説法を已めないのは」
「俺はあの時生きるって事をコイツに懸けたんだ
 其奴を嘘にしたくないからなんだよ」