カルマの坂。

   時は、中世のヨーロッパ。
   都市には人口が集中し、戦争に負けたサマンタトルは、
   失業者などでありふれていた。
   
   都市に暮らす人間は二通りに分かれる。
   ひとつは戦争に負け、生きる希望をなくしたもの
   所謂失業者である。

   もう一つは、軍需景気を見事ものにし
   成金にのし上がったもの。
  
   もちろん、成金になったものなど
   一握りの人間である。

   町では、チフスなどの伝染病が蔓延し、
   田舎では、今までに類を見ない大飢饉にも見舞われており
   何処に行っても地獄な状態である。
  

   しかし、いつの時代にも
   健気に生き抜く人間はいる者である。

   都市に住み着いている一人の少年
   クリフもそんな人間の一人だった。

   クリフは親の顔を知らない。
   物心ついたときからひとりぼっちだった。

   学も何も無いクリフには
   その日の食い扶持を調達するので精一杯であった。

   生きるためには、仕方のないことである。
   クリフは、盗みを覚えていった。

   町で見かける醜いまでに太った
   汚い大人達は、誰もクリフを捕まえられなかった。
   クリフは風のように町を駆け回っていた。