汚れ。穢れ。

   クリフには盗みが悪いことだとは思っていなかった。
   生きるためには仕方がないのだから。

   しかし、クリフは時々夜の空を見上げて思うのであった。
  
   天国だろうが地獄だろうが
   ここよりもマシならば喜んで行きたいと。

   

   そんなある日、クリフはいつものように
   パンを抱えて町の大通りを走っていると
   すれ違う行列の中に、見たことも無いような
   美しい少女がいた。

   ここら辺では見ない顔だ。
   クリフは少女を見つめたまま立ち空くしてしまった。
   
   何処か遠くの町か村からか売られてきたのであろうか
   少女はこの後の自分の運命を知っているのだろうか
   その目にはうっすらと涙すら浮かべている。

   クリフは少女が入っていった金持ちの家を
   見届けると足早に立ち去っていった。

   これは清らかなクリフの心に初めて穢れた
   心が宿った瞬間でもあった。

   あの後クリフには少女がどんな運命に合うかは大凡
   見当はついていた。

   こんな穢れた世界で生き抜いてきたのである。
   それくらいのことは当たり前のように行われている。
   
   見かけは、住み込みのメイド・・・家事手伝いではあるが
   実際の所、穢れきった大人達の
   おもちゃとして扱われてしまうのだ。