空腹。

   クリフは、心の中でいつも思っていることがある。
  
   『もし神がいるのならあなたに問いたい。
    人間は全て平等なのでは無いのかと。
    なぜ僕たちだけが愛されないのだろうか。』  
   
          と
 
   クリフは夕方になるのを待ち、盗んだ剣を持ち歩き出した。
   重たいその剣は彼の決心の重さでもあったのかもしれない。
   その姿を風というにはあまりにも悲しすぎるだろう。
   それでも少年はあきらめなかった。
   まだ先に続くカルマの坂をゆっくりと登り始めていった。



   クリフにはその後の記憶は断片的にしか残っていなかった。
   ただ怒りと悲しみに剣先を任せ、気が付いたら少年は泣いていた。
   体中を血で濡らしやっとの事でたどりついた時には
   少女の心はもう壊れてしまっていた。

   そんな壊れた魂で少女は、クリフにむかい笑っていた。
   悲しいくらいに笑っていた。
   人はこれを絶望と呼ぶのだろうか。
   それを見てクリフも自然と悲しい瞳で笑っていた。

   そして、クリフは目を閉じて最後の一降りを静に少女に
   降ろした。
   少女をこれ以上、穢れた世界に残さないように。


               ・
               ・
               ・

   どれくらいたったのだろうか、クリフは泣くことすら忘れていた
   気が付くとクリフはいつもの空腹を思い出した。
   窓から外を見ると
   登り始めた朝日がいつもの朝の訪れをクリフに教えてくれた。

   
       クリフの穢れはまだ誰も知らない。