雨桜。

雨に映された栄える其の桜を
季節の変わりを惜しむようにそっと微笑む。
雨にぬれた其の姿は何処か物憂げにっ見えた。
雨の日は傘を差したがらない君は
自棄に大人びた笑みを浮かべて僕に微笑むんだね。
其の先にある何処か悲しげな表情を僕は何時も見ている。
何処までも僕の先を走っている君は
少し疲れたと云い僕の肩に寄り添う。
僕は如何する事も出来なくて
只降りしきる雨と睨めっこを始めた。
「元気?」
君から電話が来る時は
なんでこんなにタイミングが悪いんだろう。
暗い部屋で独り溜め息で過ごす日曜の午後を
君は何回も訪ねた。
「元気だよ。」と適当な返事を返す。
こんな時の君の声は決まって寂しそうな声で
何の変哲も無い話を始める。
僕は何があったのか何時も尋ねられずに
只君の話に相槌を打つだけ。
きっとそんな話が出来たら僕はもっと変われるんだろうな。
君の部屋は何時も古い記憶の香りがする。
僕の懐かしさの中に存在する。
季節の変わり目を告げる匂いだ。
隣で小さな欠伸をする君の小さな肩をそっと抱きしめてあげられたら僕は。
いや、云わないで置こう。
きっと君に話せる話は本音の手前で止まってしまう。
君への想いも留まっているから。
其の先にあるものは未来なんかでは無いと。
僕は知っている。