無題。

ねぇ。
僕は本当に何も出来なくてごめん。
僕が出来た事といえば君に辛い思いをさせて、苦しい思いをさせて。
そして、君の心に深い傷跡を残した事くらいだ。
君はそれでも強い人間で。
僕はそれに甘んじている。
こうやって夜風に吹かれて外を歩く。
僕の右手はなんか悲しくて。
ここに君がいてくれたらなぁ。
そう願って手をコートのポケットにしまう。
高校の卒業アルバムを開くと君は笑った笑顔を見せている。
僕は其れを見るといつも悲しさで胸がいっぱいになる。
其の笑顔を守っていられたらなぁって。
君の前じゃぁ。
僕は只、一人の人間でしかなくて。
優しさや強さを見せることが出来なかった。
でも、僕は素直になれなくって。
いつも訳の解からない僕を演じきっていた。
見事に好青年を演じる事も君に素直になることも。
だけれどね。
今考えると、アレが僕の本当の姿だったのかもしれない。
本当の意味で毎日怯えていて。
君の横顔ばっかり見ていた。
授業中に君は良く寝ている。
朝から体調が悪そうだった時はとっても不安で。
何時もより笑っている時は今日は何かいいことがあったんだなぁ
と僕も幸せになったりしたっけ。
君と歩いた駅までの距離はイツも沈黙が多かったね。
二人とも二人っきりになると話す事が無くって。
でも、僕は話したい事でイッパイだった。
日曜日の昼下がりに街で見つけた事。
学校の帰り道、君と別れた後にあった事。
話したい事が多すぎて、でも何にも話せなくって。
素直に感動して。
明日もまた生きてみたい。
君に会いたい。
明日、朝会ったら何を話そうか?
なんてさ、一人で考えて何だか顔がニヤケテ来てしまっていた。
そんな楽しかった日々を僕は人生で最初で最後の幸福と受け止めるよ。
君を失って、もう1年と半分になりました。
今になってヤット君の幸福を僕は心から願う事が出来るようになった気がします。
アリガトウ。
そうつぶやいて。
そして僕はこうしているという事実に絶望しながらも
想い出をくれた君に感謝の意をささげる。
君の幸せに僕の姿が見えないことは
きっと。
素晴らしい事です。
どうか幸せであってください。