糸色望。

真理なんて知るものでは無いだろう。
事実なんて期待を大いに裏切るものばかりだ。
きっと。
人間が勝手に作り出して想像し決め付けた事実は
ドレを見ても美に富んでいる様に思える。
夢だったら良かったのにって云う事を象徴してるかの様だ。
期待なんてものは常に絶望落胆の材料にしかならない。
夢なんて云う物は屈辱しか生み出さない。
きっと此れすらも事実ではない。
そうに決まっている。
決まっているんだ。
そう思い込ませる事で僕は今日も如何にか思考を働かせている。
喉に長い間突っかかった骨を取り出してみると
其の骨は意外に脆く僕の手の上で砕けてしまった。
突っ掛かっていた時はあんなにも僕を苛ましていたのに。
長い間突っかかっていた所為か妙にシックリと来ない。
何かが違うとそう感じて
喉に手をやると鋭く尖っていた其の鋭利なモノは無く。
只、傷跡が残るだけだった。
其の傷跡は僕の怠惰を象徴していた。
きっと、この傷を自ら癒す事は無いだろう。
俗に云う戒めというヤツだろう。
只、其の戒めを活用する機会すら僕にはもう無いであろう事だけれども。
喉に刺さった骨は或る意味で僕の生きる理由になっていた。
しかし、其の先にある現実は余りにも酷で。
淀み切った世界を映し出している。
澄み切った其の瞳所為で。