月見酒。

秋の虫が鳴き始めた。
何時の間にか秋がやってきた。
僕は只、椅子に凭れ掛かって夢を見ていただけなのに。
其れでも秋はやって来た。
僕は只、ベットで寝返りをうつだけなのに。
何時の間にか空の景色も変わって
下弦の月夜が顔を出した。
こう云う夜は独り只月見酒に限るだろう。
肴はそうだな。
鱧の落としにポン酢垂れでも差すか。
只、自室の窓を開けると隣の家が見える事に気が付き
僕は此の企みを諦めてしまった。