信じていた。

自分の事を頭が良いと
知能が高いと
何処かで自惚れ自然周囲を見下していた。
そんな時代が此の僕にも確かにあった。
誰も知らない事を知っている
誰も気付いていない事に気付いている
という自覚が僕を何時しか傲慢にさせていた。
其の所為だろうか。
疑問を持てば直ぐに解決しなければ気が済まなかった。
僕には其れ丈の能力があったし
考えた末に氷解した時
何かを遣り遂げた様な気分に成り
何者かに成った様な気分がしたのも真実だ。
だけど。
次々と現れる疑問を解決し続ける内に
違う。
次々に現れた疑問を全て解決し終わって
其の後に僕に残されたのは唯の虚無だった。
他の連中はそんな事しなくても楽しそうに生きていた。
答えなんか出さなくても
抑、疑問なんか抱かなくても
彼らは幸せそうに生きていた。
笑って、泣いて、時に怒って。
其れを僕は彼らが無知だからだと思った。
地雷だらけの草原を
無邪気に駆けている丈だと思っていた。
何時か彼らも自分の愚かさを悔いる事に成るんだろうと。
地雷を踏んで全てが終わって仕舞った後で
やっと後悔するんだろうと。
だけど違った。
僕は独りで作り上げた疑問を解決し
好い気に成っていた丈の
只の孤独な餓鬼だった。
経験を理論で埋め合わせられると本気で信じていたし
願えば自分でも幸せに成れると思っていた。