低脳め!。

青年達は何時でも本気に議論をしない。
御互いに相手の神経へ触れまいと最大限度の注意をしつつ
己の精神をも大切に庇っている。
無駄な悔りを受けたくないのである。
然も、一度傷つけば
相手を殺すか己が死ぬか
屹度其処迄思い詰める。
駄から、争いを嫌がるのだ。
彼等は、良い加減な誤魔化しの言葉を数多く知っている。
否という一言をさえ10人位は何となく使い分けて見せるだろう。
議論を始める先から、もう妥協の瞳をしているのだ。
其して御仕舞いに嗤って握手しながら
腹の中で御互いが共に共に此う呟く。
低脳め!
[太宰治 道化の華]