此の愚かな少年の末路を嗤った方が正常だと言われる世の中の話。

或る所に独りの少年が居ました。
少年は凄く寂しがり屋でしたが
其れを凌駕する位に意地っ張りでした。
少年には昔沢山の友達が居ました。
でも、少年は或る事件を切欠に友達とは何なのかを考えました。
少年は考えに考えて
お八つを食べるのも忘れました。
すると、途端に『友達』の意味が解からなく成りました。
   
或る所に独りの少年が居ました。
少年は凄く寂しがり屋でしたが
其れを凌駕する位に理屈屋でした。
少年は昔色々な物を愛しました。
でも、少年は或る時愛とは何なのかを考えました。
少年は考えに考えて
夜寝る事も出来ませんでした。
すると、途端に『愛』が何なのか解からなく成りました。
   
或る所に独りの少年が居ました。
少年は凄く寂しがり屋でしたが
其れを凌駕する位に虚勢を張りました。
少年は昔独り部屋で明日を待っていました。
夜ベットに入って朝起きると朝が来るのでした。
でも、少年は或る時今とは何かを考えました。
少年は考えに考えて
おなかが空く事も忘れました。
すると、途端に『今』や『明日』が解からなく成りました。
明日は、一体何処から来るのだろう?
今って何なんだろう?
   
或る所に独りの少年が居ました。
少年は凄く寂しがり屋でしたが
其れを凌駕する位に変人でした。
少年は昔昼寝をする事が好きでした。
一瞬の中に未来へ行ける様な気がしたからでした。
でも、少年は或る時、意識とは何かを考えました。
少年は考えに考えて
眠くなりました。
すると、途端に『意識』が解からなく成りました。
   
或る所に独りの少年が居ました。
少年は凄く寂しがり屋でしたが
其れを凌駕する位に嘘吐きでした。
少年は昔仕合せでした。
でも、少年は或る時仕合せとは何かを考えました。
少年は考えに考えて
考えました。
すると、途端に『仕合せ』の意味が解からなく成りました。
    
或る所に独りの少年が居ました。
少年は凄く寂しがり屋でしたが
其れを凌駕する位に人間嫌いでした。
少年は昔独りで色々な人に成る独り遊びが好きでした。
でも、少年は或る時自分とは何かを考えました。
少年は考えに考え
遂に発狂しました。
少年は自分の意味が解からなかったのです。
      
自分丈では有りません。
友達や愛や時間や意識や仕合せの意味も遂には解かりませんでした。
少年は発狂し薄れ逝く意識の中で最後に考えました。
何で誰も教えて呉れないんだろう。
何で皆平気な顔をしているんだろう。
何で其んなに嗤って居られるのだろう。
僕は誰?
僕は何もの?
何なんだろう。
何なんだろう・・・。