オルタナティブの陰に隠れた基礎工事作業は鏡の前で異性体を作る。

一体何を喪ったというのだろうか?
体温を喪ったのか。
匂いを喪ったのか。
声を喪ったのか。
背格好や顔立ちを喪ったのか。
否。
此れ等は全て復元が可能な物である。
僕は唯喪ったと錯覚している丈なのだろうか。
思考。
思考に触れる事が出来ない。
だとするのならば。
思考が存在証明になるのだろうか。
其れは如何云う定義で或る特定の思考と判断する事が出来るのか。
其れはビジュアル的なものに起因する。
否。
然し、其の外見が大幅に変化しても
僕は其れを其れだと認める事例を経験している。
一体全体其の思考は何に付随して其れを其れと認めるのだろう。
共通の経験則だろうか。
然し、経験則すら捏造出来る。
僕は一体何を喪ったと言うのだ。
一体何が悲しいと言うのだ。
此処に若し其れと同じ目鼻顔立ちと
其れと同じ匂いと
其れと同じ声と
其れと同じ経験と
其れと同じ思考を持っていたら
僕は其れを其れと認めるのだろうか。