七夕。

自分の理性に従って文字の羅列を口から吐き出せたら
君を傷つけずに済んだのかも知れない。
君を傷つけずに居られれば
僕等は屹度、何時迄も同じ所を堂々巡りだった。
何も進展せずに
時が僕らを腐敗させる。
何も解からない儘
此の三叉路を別々に進む。
其れでも良かったじゃ無いか?
君を知り過ぎる事拠りは。
今日は七夕だって言うのに湿気た話をするな。
君は、そう笑うだろう?
其の華奢な体から伸びる長い髪を揺らして
走り出すだろう?
笑った時に出来る笑窪君も。
実は苦手なミュールを履いて
大人振った態度を僕に見せる君も。
化粧をするのが苦手で
アイラインを巧く引けないで
機嫌を悪くする君も。
只の偶然が僕にこんなにも偉大な幸福を齎し
其れ以上の悲しみを運んで来る。
僕は世の中で選ばれ生きる価値の有る人間の様に錯覚を起こした。
此処に微かに残る君の温もりに
失った時を恨んだ。