航海。

だから?
だから何なんだい?
如何したいんだい?
何が言いたいんだい?
真理なんて宝探しを?
君の持っている宝の在り処を示した地図が?
本当にそんなものが或るだなんて思っているのかい?
何故、其の地図が出鱈目だって思わないのかい?
疑わないのかい?
そんな瞳をするなよ。
僕が泣かせたみたいじゃないか。
僕は可能性を述べた迄だよ。
今迄君の発言に紫煙を燻らせながら只頷いていた丈だ。
其れでも罪だというのかい?
僕が悪いというのかい?
其れは筋違いって物さ。
君は今目の前にあるものが全て説明付くかい?
過去を証明できるかい?
君の存在を立証できるかい?
何一つ出来ないだろう?
ほら。
其れと同じ事なんだよ。
僕が言いたい事はね。
全く同じ。
何一つ正しい物もないし
何一つ間違っちゃいない
君が真理を追究するのだって
其の事実が別に過ちではない
只、僕が言いたいのはそんなことじゃないのだ。
其の事実に僕を巻き込まないで欲しい
只、それだけなのだ。
僕の所有する時間を君に提供する事も
僕の所有する思想を君に提供する事も
更に言えば僕に関わる事を止めて欲しいと言ったまでだ。
其れだけなんだよ。
君が真理を追究するのは結構。
僕は大いに賛成だ。
だが、其の無謀な航海に僕を道連れにしないで欲しい。
若し君が其の航海に疲れ
酒でも飲みたくなったのなら
僕は自分の所有する時間を出来る限り
君に提供しよう
馬鹿みたいに嗤って
世間話でもして
幾らでも話をしよう
そうしたら亦、君は航海に出るといい。