何時もの1日。

初めて煙草を飲んだ時。
僕は何かが変わって仕舞う様な気がした。
其れが怖かったか?
否。
僕は、僕が僕で或る事が変わって仕舞う事を望んだのだ。
そう言って僕は自分を納得させる。
然し、期待は裏切るもので
果たして僕は変わったのかと言われると
何も変わっては居なかった。
其処に証明の出来ぬ自分が居る丈だった。
何時もの方法で思考し
何時もの方法で泣き
何時もの方法で嗤う僕が其処に居た。
何も変わらなかった。
望んだ物は何時だって指の隙間から流れ落ちて
僕の手に残る事は無い。
流れる雲を見詰めて僕は太陽に手を翳した。
空が蒼いのも
風が心地良いのも何も変わらない世界
其処に苦痛を感じるけれど
此れを喪ったら
幸せだったって泣くのだろうか?
喪っても居ない僕には解からない問題だった。
過去を嘆いても仕方が無い様に
其の問題に関して
僕が思考を働く事は酷く馬鹿げた事の様に思えた。
遣って見なくては解からない事を
遣れば解かる事を遣らずに思考するのは馬鹿みたいだ。
夕焼けに染まった街は明日への希望が詰まっている様だった
明日に希望の無い僕は不釣合いの様な気がして
コートのポケットに手を突っ込んだ儘
僕は逃げる様に裏通りへ姿を消した
誰かが其れに気が付いて罵声や石を投げ付ける前に。
散らかった部屋の隅で月明かりを眺めながら
感傷的な思考に浸り
僕は其れを精神の呼吸と称して
如何にか今日も生きて逝ける事に絶望を示した。
傾いた月は直ぐに太陽を誘い出す。
其して、朝が遣って来るのである。