葉蔵。

葉蔵が自らに人間と言う職業に対して
失格の烙印を押すのであれば。
差し詰め、僕は人間の出来損ないと言う所だろうか。
人間と言う職業は頗る奇妙に其して無気味に見え
生きて行く糧として道化を持ち
其の仮面の下には常に恐怖と震怖している。
僕には其処から進む事が出来ない。
進む機会も無い堀木の様な存在に出遭えるのであれば
僕も葉蔵と同じ烙印を押す事が出来るのであろうか。
怯え続ける結果。
其の恐怖を只管直視するか・・・。
其れとも目を背けるのか・・・。
其れとも巧く付き合い丸め込むのか・・・。
直視する事も覚束ず。
かと言って目を背ける事も出来ず。
巧く付き合うなんてとても出来そうに無い。
葉蔵は最後迄直視しようと試みた。
其の結果、彼は病院へ移され
烙印を自分に押すに到る。
僕は屁っ放り腰で今日も直視した振りをする。
僕は出来損ないなのだ。
人間と言う職業に対して
其の絶対的恐怖。
死すらも飲み込んで仕舞う恐怖。
其れに対して丸め込む事も
直視することも出来ない。
直視する勇気を有すれば彼の様になれただろうか。
24歳で此の世を去る彼の様に。
人間は長く生き過ぎた。