過去。

目の前に2つの洋盃が在って
何の気なしにどちらか一方を手に取る。
何故、其処の洋盃を手に取ったのか。
何となく取ったのだ。
仮に、右側の洋盃を取ったとして
何故、左側ではなかったのか?
右を取らざるを得なかったのか。
其の理由を自由意志で決め付ける事は出来ない。
其処に自由意志が存在した事を認める事は出来ない。
必然性が孕んでいる限り
誰にも其れを否定する事は出来ないのである。
さて、然し。
僕が此処で説いているのは過去と現在が繋がった
一つの直線を帯びていると言う前提が潜んでいる事にお気づきだったろうか。
僕が頻繁に言う。
過去の存在の否定。
一概には言いかねるが、其の理由は以上の様な所から来ているのだ。
単に其れ丈ではないが
此の様な色々な可能性の上に僕の時間論は存在する。
今。しか存在し得ない状況だとするのなら
過去等余り存在する理由がない。
少なくとも、過去等自分の内に潜む
信じて疑わない過去と言う妄想に過ぎないのだ。
只、其れ丈である。