イリア。

水素と酸素が反応して水が出来る。
然し、本当にそう断言して良いのか?
明日も同じ結果が出るという保障が何処に在る?
明後日は如何だ? 一億年後は?
或いは、十億年前は?
追試験をやった奴が全員が虚言症だったら?
再現性と簡単に言うが、
完全に同じ条件を再現して実験をするなんて厳密には不可能だろう?
『彼の時の水素』と『今此処に在る水素』が
全く同じものである事を如何やって証明したらいい?
水素と酸素の反応に若し空間上の座標軸が関係していたら?
同じ実験をやって地球とM78星雲では全く違う結果が出たら如何する?
客観性と再現性を本気で追及しようとしたら
科学は何ひとつ証明できない。

という訳でだ、『ある程度の』客観性と再現性があれば、
其れは科学的には認められる事になっている。
然し其れは、そういう事にしておかないと
何事も進まないから仕方なくという
「ナアナアの決め事」に過ぎない。
此れが宗教なら
実験だの何だのという七面倒臭い手続きを全部省略して
一足飛びに真理に到達出来るのかも知れん。
そうやって到達した真理がなんぼのもんかは別としてな。

所が科学はそういうやり口とは袂を分かってしまった所為で、
『近似値としての正確さ』を手に入れるのと引き換えに
真理との距離を無限大にしちまった訳だ。
何しろ例外の可能性は、無限に存在するからな。
科学がアキレスなら真理が亀さ。
然しな、そのアキレスと亀の隙間にオカルトは潜むんだ。
心霊写真のインチキを一枚一枚暴いていった所で
心霊現象其のものの否定には辿り着けないし、
スプーン曲げや念写のトリックを幾等見破っても
本物の超能力者が何処かにいるかも知れない可能性をゼロには出来ない。
科学は科学であるが故に
オカルトを絶対に論破で出来ないんだ。
ちょきがぐーに勝てないようにだ。
科学は、自分でアキレスになることを選んだはずだし、
それが科学の短所であると同時に長所でもあるはずなんだ。
いつまでたっても亀に追いつけないのが苛立たしいのなら、
とっとと科学なんぞやめて宗教でもやればいいんだよ。

太陽系電波新聞部編集長