夏の匂いを忘れる様な
秋の気配に包まれる夜
駅のホームで今日はお別れ
2人階段、昇る手前で
言葉は俯いて
ぎこちない
「お休み」
伝え切れ得ぬ心を亦
置き去りに
最終電車が来る迄の
あと数分間
「月が今夜は綺麗ね」
と、勇気のないセリフ
終わる季節を眺め
「好き」と言えぬ私
何でも話せ得る付き合いだから
変わり
壊れる事を恐れる
目の前の車内に乗り込んで
「然様なら」
閉まる扉
硝子越し見せる笑顔
最終電車が動き出し
今日も亦「此れで良かった」
と、独り言
口にしないセリフ
触る微熱を抑え
月と走りながら
募る想いの儘
「好き」と言えぬ私